東京都荒川区出身の在日コリアン三世、任成壎(イム・ソンフン、1986年生まれ)が、11月に開催される全日本ボクシング選手権に4度目の挑戦をする。彼は朝鮮大学校の教職員として働きながら、ボクシング部とラグビー部の指導者も務める現役アスリートであり教育者だ。
任は15歳でボクシングを始め、朝鮮大学校を卒業後も競技を続けてきた。大学教員として14年間勤務する傍ら、2022年に現役復帰し、昨年12年ぶりに全日本選手権に出場。今年も予選を突破し、再びリングに立つ。
「正直、才能も実績もない。でもだからこそ、誰かの心を動かせる挑戦になると思う」と任は語る。
民族教育とスポーツの架け橋
任のルーツは東京朝鮮第1小中級学校から始まり、東京朝鮮中高級学校、そして朝鮮大学校へと続く。在日コリアン教育の体系をそのまま歩んできた。彼にとって「母校」とは、ひとつの学校ではなく全国の朝鮮学校を意味する。
「朝鮮学校は制度上の不利やSNSでの誹謗中傷、学生数の減少など厳しい状況が続いています。そんな中でも、スポーツを通じて喜びや希望を届けたい」と話す。
任はボクシングを通して、朝鮮学校の子どもたちが「自分もスポーツを続けたい」と思える環境づくりを目指している。
「脇役」だからこそできる挑戦
任の戦績は、全日本社会人選手権優勝(75kg級)、全日本実業団選手権優勝(64kg級)、2024年全日本選手権3位(80kg級)など。だが本人は「自分は全日本の舞台では脇役」と位置づける。
それでも彼は、年齢や環境、身体的な壁を超えて挑戦を続ける。「不可能への挑戦」「才能への挑戦」「年齢への挑戦」という言葉を掲げる彼の姿勢は、多くの在日社会の人々に勇気を与えている。
支援プロジェクト、177%達成
今回の挑戦に向け、任はクラウドファンディングを通じて最低限の活動費を募った。目標金額11万円に対し、195,000円(達成率177%)が集まり、57人が支援に参加した。
支援金は出稽古費やトレーニング費、栄養補助、交通・宿泊費などに充てられる予定だ。任は「両親が闘病中で生活も厳しいが、応援してくれる人々の思いを力に変えて戦う」と話す。
全日本選手権は11月24日開幕
全日本ボクシング選手権は11月24日から30日まで、東京都墨田区総合体育館「ひがしんアリーナ」で開催される。任は85キロ級で出場予定。入場は無料で、YouTubeでの中継も行われる。
「どんなに格好悪くても、挑戦をやめない。その姿を見て誰かがもう一度立ち上がるきっかけになれば、それが一番うれしい」と任は語る。
彼の挑戦は、単なるスポーツの勝敗ではなく、在日社会と民族教育に向けた「希望のメッセージ」として注目を集めている。
