光熱費の上昇、人手不足、輸入牛肉の価格高騰が街の焼肉店を直撃し、経営環境が悪化している。2024年には「焼肉店」の倒産件数が過去最多の45件に達し、前年比で66.6%の増加を記録した。これは、2012年の35件を大きく上回る数である。
倒産増加の背景に物価高と競争激化
倒産が急増した背景には、円安や物価高が影響している。輸入牛肉だけでなく、和牛や野菜の価格も高止まりしており、仕入コストの上昇が経営を圧迫している。さらに、大手チェーン店の新規参入や他業態からの焼肉店進出により、価格競争が激化。値上げによる価格転嫁が難しく、小規模店の多くが苦境に立たされている。
コロナ禍からの勝ち組が一転
コロナ禍では焼肉店の換気能力が評価され、“ひとり焼肉”ブームも追い風となり、倒産件数は2020年に14件と低水準だった。しかし、コロナ後の物価高騰や大手チェーン店との競争が、小規模店にさらなる負担を強いている。
2024年に倒産した45件のうち、販売不振が原因とされたのは42件(前年比100%増)で、その多くが資金力に乏しい小・零細規模の店舗だった。個人経営が全体の40%を占め、従業員10人未満の事業者が97.7%を占めている。
今後の見通し
小規模焼肉店では、仕入価格の交渉力や省エネ設備の投資が難しい状況が続く。一方、大手チェーン店の存在感が増し、価格競争の激化が予想される。専門家は「淘汰が進む中で、小規模店舗の生き残りには差別化や新しい付加価値の提供が必要だ」と指摘している。
2024年は、焼肉業界にとって厳しい年となったが、今後もこの逆風が続くのか、業界全体の動向に注目が集まる。
