水害が深刻化する中、国土交通省は来年度から、1級河川(全109水系)の本流・支流を対象に、洪水(外水氾濫)と内水氾濫を一体的に示す「新水害リスクマップ」の作成と公開に乗り出す。従来のマップが洪水による浸水のみを対象としていたのに対し、内水氾濫も加えることで、より実態に即した水害リスクを想定し、迅速な避難を促す狙いがある。
洪水と内水氾濫の被害拡大を防ぐ取り組み
近年の水害では、洪水と内水氾濫が同時発生し、被害が拡大するケースが増えている。例えば、2020年の九州豪雨では、熊本県人吉市で1級河川・球磨川が氾濫する数時間前に市街地で内水氾濫が発生し、避難が困難な状況となった。また、2023年の秋田県での記録的大雨では、秋田市を流れる1級河川・太平川の氾濫と内水氾濫が重なり、市内で約6,100棟の住家被害が発生する広範囲な被害が確認された。
新マップの特徴と導入計画
新たな水害リスクマップは、本流・支流での洪水と内水氾濫を一体化し、浸水の広がりを〈1〉内水氾濫による低地の浸水開始、〈2〉支流の氾濫、〈3〉本流の氾濫という段階的なプロセスで示す。また、人口が多く内水氾濫のリスクが高い都市部を優先して作成が進められる。
さらに、2026年度以降は、人工衛星や浸水センサーを活用したリアルタイムの浸水情報を組み合わせ、浸水が広がる前に避難を可能にする仕組みを導入する計画だ。
水害対策の強化に期待
国交省は2022年から1級河川を対象とした洪水リスクマップを公開しているが、内水氾濫を考慮したものはほとんどなく、流域自治体のハザードマップも洪水と内水氾濫を一体的に示したものは極めて少ないという。今回の取り組みは、内水氾濫も含めたリスク評価の充実によって、防災意識の向上と住民の安全確保に大きく寄与することが期待されている。
国土交通省の新たな取り組みは、水害の複雑化に対応し、被害軽減を図る画期的な一歩となるだろう。
