[コラム] 「リアクションの国」日本―文化の違いが生み出す光景

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日本で暮らし始めてから最も印象に残ったことの一つは、日常会話やちょっとしたやりとりの際に示される「リアクション」の大きさである。たとえば相手の話に「へえ、そうですか」「すごいですね」といった声を即座に返す場面は、日常生活のあらゆる所で見受けられる。

このリアクション文化は、人間同士の会話にとどまらない。バスに乗車すれば、運転手が乗客一人ひとりに「ありがとうございます」と声をかける光景にしばしば出会う。時には中高生の集団が大挙して乗り降りすることもあるが、その際も運転手が人数分の「ありがとうございます」を欠かさず口にする。たとえ小さな行為であっても、それに対して「感謝」や「驚き」などの反応を示すことが、日本社会に深く根付いているのである。

一方で、韓国では、大げさな言葉を発さずに相手の話を聞くだけという場面が多い。もちろん個人差はあるが、日常的には無言のうなずきや表情だけで「理解している」ことを示す場合が少なくない。初めて日本の研究室に所属した際、先輩から「どうしてそんなに反応が薄いのか」と問われた経験がある。当時の自分にとってはまったく普通の態度であったが、日本では「そっけない」「冷たい」という印象を与える可能性があるのだと気づかされた。

こうした文化的相違は国際的な交際・結婚の傾向にも影響を及ぼしているように思える。かつては年上の日本人男性と若い韓国人女性のカップルが多かった時期もあったが、近年は逆に年上の日本人女性と年下の韓国人男性という組み合わせをよく見かける。理由はさまざまだろうが、日本人女性の豊かなリアクションが韓国人男性にとって魅力的に映ることも一因ではないか。「わあ、すごいですね」といった、相手の言葉をしっかり受け止めていることを即座に表す反応は、「自分が尊重されている」という安心感を与える効果が大きいのである。

無論、リアクションが大きいほうが常に正しいわけではない。黙っていても気持ちが伝わるほうが心地よい状況もあり、一概に優劣をつけることはできない。ただし、異なる文化圏の人同士が互いの「当たり前」を知らずに接すると誤解が生じやすい。日本ではちょっとした行為に対して「ありがとう」を言わないのは無礼と見なされやすいが、韓国では声に出さなくても自然に伝わるということもある。こうした差異を把握するかどうかで、コミュニケーションの円滑さは大きく変わってくる。

日本で仕事や研究、日常生活を送るのであれば、「相手のアクションに応答する」という姿勢を常に意識したい。ささいな場面でも「助かりました」「すごいですね」などと素直に伝えるだけで、人間関係はぐっと良好になるものである。その根底にあるのは、相手の行動を見逃さず、きちんと受け止めるという敬意であろう。筆者自身、24年にわたる日本での生活を通じて、このリアクション文化の素晴らしさに気づかされ、いまでは積極的に取り入れているところである。

ソン ウォンソ
秀明大学学校教師学部 専任講師
NKNGO Forum代表

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