[コラム] 春風とともに迎える、悠仁親王の筑波大学入学

 東京から北東へ約60kmの場所に位置するつくば市は、多くの国立研究所が集中する研究都市である。約40年前、国の主導で計画・開発が行われた当初、この地域には農地が広がるばかりであったが、今では日本を代表する学術拠点として確固たる地位を築いている。

 私が初めてつくばの地を踏んだのは、今から23年前のことである。周囲からは「何もない街だ」と散々聞かされていたため、不安を抱きつつ向かった記憶がある。ところが、実際に行ってみると思った以上に生活必需の施設が揃っており、広々とした街並みも相まって、のびのびと快適に暮らせる環境だと感じた。当時は現在のように秋葉原から約45分で結ぶ「つくばエクスプレス」がまだ開通していなかったため、高速バスがつくばセンターを経由していた。驚いたのは、百貨店の隣に広大な平面駐車場が存在していたことである。都市の中心部にこれほど贅沢な駐車場があるのかと、強い衝撃を受けたことをよく覚えている。

 それから数十年の間につくばはさらに発展を遂げた。ショッピングモールやさまざまな商業施設が次々とオープンし、近年ではコストコまで進出して生活の利便性は格段に高まっている。ただし、人口が約26万人という都市規模ゆえ、大規模な商業施設が一つできると人がそちらに集中し、さらに新たな施設が建つと別の場所へ流れるという現象がしばしば見られる。こうした変遷によって既存の施設が経営難に陥り、テナントが撤退して閑散とした雰囲気が漂うこともあり、街の空気が落ち着かない場合があるのも事実である。

 しかし、ほかの地方都市と比べてつくば市が大きく異なるのは、数多くの研究所や大学が集積し、学術色が非常に強い点である。つくば市では住民の博士号取得率が全国トップクラスだといわれており、コンビニエンスストアでアルバイトをしている人が博士課程の学生だった、という話も珍しくない。大学と研究所の連携が活発で、研究設備や実験施設を共同利用しながら研究を進めることも多々あり、学生が研究所でアルバイトをして早い段階から現場を体験する機会も得られる。

 つくばの街は道路や歩道が広く、移動手段としてはクルマや自転車が主流である。バス路線は限られているため、都心のように歩行者が多いわけでもない。都会の喧騒や娯楽を求める人にとっては「退屈」と映るかもしれないが、研究や学業に専念したい人には理想的な環境といえる。私自身、17年間つくばで生活した経験から、この落ち着いた空気のおかげで研究に集中できたと実感している。

 こうした学術都市・つくばに、今年の4月、悠仁親王殿下が筑波大学に入学されると耳にした。慣れない土地での生活にどのように適応されるのか、わずかな不安もある反面、日本の皇室の一員が「研究の街」に身を置き、豊かな自然やゆとり、そして活発な学術的雰囲気を享受しながら成長の機会を得ることは大変意義深いと考える。つくば市が持つ豊富なリソースと、大学や研究所のもたらすシナジーが、悠仁親王殿下の学びと成長を着実に後押ししてくれるであろう。

 私の母校であり、長らく生活の基盤でもあった筑波大学に新しい風が吹き込むことで、どのような化学反応が起きるのか、今から楽しみである。これまでの歩みを踏まえつつさらなる発展を遂げ、「研究に最適化された街」という本来の強みを守り続けてほしい。そして、日本の将来を担う皇室の方をも迎え入れるだけの包容力を備えた街として、多くの人が研究や夢を存分に育める環境が今後も続くよう、心から願っている。

ソン ウォンソ (Ph.D.)
秀明大学学校教師学部 専任講師
早稲田大学教育学部 非常勤講師
東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員

Reporter

Reporter

コメントを残す

ウィークリーニュースジャパンをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む