公立小中学校の教職員が、本来は学校予算で賄うべき教材や備品を自腹で購入している実態が明らかになった。千葉工業大学の福嶋尚子准教授らの調査によると、2022年度に自己負担を経験した教員は全体の75.8%に達し、小学校の非正規教員では88.5%に上った。
調査では、自己負担の内訳として授業関連が最も多く58.8%を占めた。続いて家庭訪問や出張に伴う旅費(37.1%)、部活動にかかる費用、児童が壊した備品の代替購入などが挙げられた。広島市の小学校教員は算数や漢字ドリル、給食用のマスクやウエットティッシュを自費で購入しており、中学校教員はサッカー部の顧問を務めた際に2万円以上の審判服を自腹で用意した例もある。
広島市教育委員会によると、学校予算は前年度に年間計画を立てて使用用途を決めるため、年度途中で必要になった物品を調達するには正規の手続きが不可欠だ。カタログ確認や書類作成、校長や教頭による検品などのプロセスがあり、時間的制約から「自腹で済ませるしかない」という声が現場で上がっている。
福嶋准教授は「公立学校は使える公費が少なく、さらに手続きが煩雑であるため、教員が自己負担せざるを得ない構造がある」と指摘する。調査結果は著書『教師の自腹』にも詳しくまとめられており、制度的な改善の必要性が改めて浮き彫りとなっている。
