日本政府は、建物の建築から運用・解体までの生涯を通じて排出される二酸化炭素(CO2)量の算出を建築主や建設業者に義務付ける新制度の導入を検討している。建築分野での脱炭素化を促進するため、CO2排出量の「見える化」による削減努力を求める狙いがある。政府は2026年の通常国会に関連法案を提出することを目指し、3月までに制度化に向けたスケジュールを策定する予定だ。
新制度では、一定規模以上の新築建築物に対して「ライフサイクルアセスメント(LCA)」を導入し、生涯にわたるCO2排出量の算出を求める。算出対象は、材料調達や資材製造、施工、使用、修繕・補修、解体、廃棄物運搬・処理の各段階にわたり、鉄製造や車両での運搬、重機使用、建物使用時の空調設備の運用などが含まれる。
国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、2022年時点で建築物関連のCO2排出量は世界全体の37%を占めている。これまで日本政府は高効率空調設備の導入支援などを通じて建物使用時の排出削減を進めてきたが、建設や解体を含むその他の段階では対策が遅れていた。このため、全段階のCO2排出量を算出し、建設業者に削減努力を促す取り組みが求められている。
欧州では、すでに建築物のLCAが進んでいる。欧州委員会は昨年4月、一定規模を超える新築建築物について2028年からCO2排出量の算出と開示を義務付けることを決定。さらに2030年からはすべての新築建築物を対象とする。フランスやデンマークでは排出量の上限規制も導入されている。
日本政府は昨年11月、内閣官房に国土交通省、経済産業省、環境省などが参加する関係省庁連絡会議を設置し、制度化に向けた議論を開始。今後、建材ごとの製造過程で発生するCO2量の算出方法や、算出結果の公開方法、算出義務の対象となる建物の規模についての検討が進められる。
政府は将来的に建築物の生涯排出量の上限規制導入も視野に入れており、まずは算出義務化に向けた制度整備を急ぐ方針だ。
