韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が内乱容疑で逮捕されるという、韓国政治史上前例のない事態が発生した。2024年12月15日、高官犯罪捜査庁(高捜庁)と警察による合同捜査本部は、尹大統領が「非常戒厳」を発令したことについて「憲法秩序を乱す目的で暴動を企てた」として、内乱の首謀者とみなし逮捕に踏み切った。
現職大統領は憲法により不訴追特権を有しているが、内乱罪はその例外である。韓国の現職大統領が身柄を拘束されたのは史上初めてのことであり、国内外で大きな衝撃を与えている。
戒厳令発令とその後の混乱
尹氏は2024年12月3日、政府提出の予算案削減や検察官への弾劾を繰り返す野党の行動を「内乱を企てる反国家行為」と非難し、「非常戒厳」を発令。これに伴い特殊部隊が国会議事堂に乱入するという異常事態が発生した。
しかし、国会は直ちに戒厳令の解除を求める決議を可決し、尹氏は憲法の規定に従い12月4日未明に戒厳令を解除した。
その後、野党主導の国会は12月14日に尹大統領の弾劾訴追案を可決。これにより尹氏は大統領としての職務を停止された。
逮捕への経緯と捜査
高捜庁は尹氏に対し3度の出頭要請を行ったが応じなかったため、ソウル西部地方裁判所の逮捕状を取得し、12月3日に大統領公邸で逮捕を試みた。しかし、大統領警護庁の要員による抵抗に遭い、当初の逮捕は失敗に終わった。
その後、公邸周辺では警護庁と警官隊の緊張が高まり、一部では警護庁内部の方針を巡る対立も報じられていた。今回の逮捕成功により、尹氏は高捜庁での取り調べを経て、ソウル拘置所に移送される見通しだ。
今後の憲法裁判所の判断に注目
弾劾訴追については、憲法裁判所が180日以内に判断を下す予定である。訴追が妥当と判断されれば、尹氏は失職し、60日以内に後任を決める大統領選が行われる。一方で、訴追が妥当でないとされれば、尹氏は大統領としての職務に復帰することとなる。
尹氏は「韓国の自由民主主義と憲政秩序を守るための正当な行動だった」と戒厳令の発令を正当化し、弾劾や捜査に対して「徹底抗戦する」との意思を明らかにしている。韓国の政治と憲政の未来を左右する重大局面が訪れている。
