ソン ウォンソ
大学1年生の冬休み、初めて日本を自由旅行した。新鮮で楽しい経験であったが、言葉の壁に直面したことは強く印象に残っている。電車内のアナウンスが何を言っているのか分からず、駅に貼られた案内板や看板も理解できなかった。このもどかしさがきっかけとなり、「日本語をマスターしよう」と決意したのである。
韓国に帰国後、すぐに日本語学習を開始した。朝早起きして語学学校に通い、大学の授業と両立させながらコツコツ勉強を続けた。その結果、大学在学中に日本語能力試験(JLPT)のN1にも合格し、日本政府の国費留学生として来日することもできた。この過程で、語学習得において重要な要素に気づいたのである。
語学を学ぶ上で最も重要なのは「なぜその言語を学ぶのか」という明確なモチベーションを持つことである。私の場合、日本旅行中に感じたもどかしさが強い動機となった。「次に日本に行ったときは自由に会話をしたい」「案内板やアナウンスを理解したい」という目標が学習の原動力となった。
このように具体的な目標があれば、日々の学習に方向性が生まれる。一方で、目的が曖昧であればモチベーションを維持するのは難しい。「なぜその言語を学びたいのか」「その言語で何を達成したいのか」を明確にすることが、語学学習の第一歩である。
日本語学習において、特に力を入れたのが「リスニング」である。交換留学生として来日していた時に大量に録音したラジオ番組をバス通学中に繰り返し聴いた。ラジオは字幕がないため、耳だけで内容を理解しなければならず、自然と聴解能力が鍛えられた。発音やイントネーションが正確である点もリスニング練習に最適であった。
また、語学学習において「繰り返し」は欠かせない。単語や文法、表現を暗記し、使いこなせるようになるまで練習を重ねた。語学は短期間で習得できるものではない。日々の積み重ねが重要であり、その結果、徐々に実力が身についていくのである。
AI翻訳ツールの発展により、語学学習の必要性について議論されることがある。しかし、AIではリアルタイムの会話で生まれる感情やニュアンスを完全に伝えることは難しい。語学を学ぶことは単なるスキルの習得にとどまらない。その言語を話す人々の文化や価値観を理解し、共感を深めるプロセスでもある。AIに頼るだけでは得られない、人と人とのつながりこそが語学学習の醍醐味である。
その後、中国語学習にも挑戦したが、日本語ほどの熱意を持てなかった。動機が弱かったことが原因である。「中国語を学ばなくても十分にコミュニケーションが取れる」という環境があったため、学習の優先度が下がってしまった。語学学習において動機と目標がいかに重要であるかを再認識させられる経験であった。
語学学習を始める際は、「なぜこの言語を学ぶのか」「どのような目標を達成したいのか」を明確にする必要がある。そして、その目標に向かって毎日努力を重ねることで、必ず結果がついてくる。語学は単なるコミュニケーションツールではなく、新しい文化を知り、人々と深くつながるための架け橋である。語学を通じて広がる可能性を信じ、一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
ソン ウォンソ (Ph.D.)
秀明大学学校教師学部 専任講師
早稲田大学教育学部 非常勤講師
東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員
