近年、人工知能(AI)の影響力は、私たちの日常生活のあらゆる場面で顕在化している。検索はもちろん、学習や医療などの分野においても、その活用事例は加速度的に増えている。さらに、人々がAIサービスに費用を支払ってでも利用する傾向が強まっているのは興味深い現象である。かつて「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」という言葉が経済格差を示す際によく使われてきたが、いまやAIを利用する者としない者との間に“情報の格差”が顕在化していると言える。
ある知人のお嬢さんの例が示唆的である。彼女はもともと数学を苦手としていたが、最近になって塾をやめ、AIを活用して学習を進めるようになった。その結果、成績が目に見えて向上したのである。わからない問題をAIに入力し、理解できるまで何度も質問を繰り返すと、AIは多様な解法やアプローチを根気強く提示する。人間の家庭教師や塾講師であれば「まだわからないのか」と叱るかもしれないところを、AIは同じ質問を何度でも受け付けてくれるのが利点である。これによって学習者は疑問をためらうことなく解消でき、短期間で成績を上げることが可能になるのだ。
医療分野においても同様の現象が見られる。病院へ行く前に、自身の症状や気になる点をAIに詳細に問いかけている人が増えているのである。短い診療時間や状況的制約から医師に十分な質問ができない場合でも、AIから事前に関連情報を得ることで、疑問を整理してから受診できる。いわゆる「5分診療」の限界を補完する手段として、AIが大きな役割を果たしているのである。
こうした事例から、AIは学習や業務を「楽にする」「代替する」存在というよりも、「より効率的かつ効果的にしてくれる」存在と捉えたほうが正確である。ただし、AIの応答をすべて鵜呑みにしてしまうのは危険であり、最終的な判断や批判的思考は依然として人間に委ねられている。しかし、必要な場面で適切にAIを活用する人々は、知識や情報を大幅に得やすくなり、結果として情報活用能力が飛躍的に向上している。
結論として、AIの進化は人間を“バカにする”のではなく、むしろ“より賢くする”方向に寄与していると考えられる。一方で、このメリットを享受する人々と、AIを活用しない人々との間の格差はさらに大きくなっていくことが予想される。個人および社会は、この現実を直視し、新しい技術や情報を主体的に取り入れ、学び続ける姿勢を確立する必要がある。AI時代を迎えた今、私たちに求められているのは、「技術に振り回される側」ではなく、「技術を自在に操り、自らの成長につなげる主体」となることである。
要するに、AIは私たちをバカにするのではなく、ますます賢くしてくれる存在である。ただし、この波に乗れない者は、せっかくの機会を逃し、従来以上に情報格差の中で取り残される危険があることを理解しておくべきである。AIを活用する力は、今後の社会における新たなリテラシーとして急速に確立しつつあるといえよう。
ソン ウォンソ
秀明大学大学学校教師学部 専任講師 / NKNGO Forum代表
