東京の歴史と文化を味わう—文豪たちが愛した老舗レストラン
東京には、長い歴史を誇る老舗のレストランや食堂が数多く存在する。江戸・明治・大正時代から続く名店は、単なる食事処ではなく、日本の文化や歴史が息づく場所でもある。今回は、文豪や政治家たちが愛した東京の老舗レストランを紹介しよう。
駒形どぜう 本店(創業1801年)—江戸の庶民が愛したどじょう鍋
文豪たちの足跡:川端康成、志賀直哉、林芙美子などの作家がこの店を愛した。林芙美子は、戦前の駒形どぜうの風景を随筆に残している。 料理:看板メニューは「どぜう鍋」。甘辛い割下で煮込んだどじょうに、ネギをたっぷり載せていただく。 雰囲気:江戸情緒漂う木造建築。畳敷きの大広間で、ちゃぶ台を囲む昔ながらのスタイルが魅力。 アクセス:東京都台東区駒形1-7-12(浅草駅から徒歩5分)
玉ひで(創業1760年)—親子丼発祥の名店
歴史:江戸幕府の御鷹匠が副業として始めた鳥料理の名店。明治時代に5代目の女将が「親子丼」を考案したとされる。 料理:元祖親子丼と軍鶏鍋が名物。割下で煮込んだ軍鶏肉と半熟卵の組み合わせが絶品。 雰囲気:江戸の面影を残す和風の店構え。土間と座敷席があり、落ち着いた空間。 アクセス:東京都中央区日本橋人形町1-17-10(人形町駅から徒歩1分)
神田まつや 本店(創業1884年)—江戸前蕎麦と文豪の交差点
文豪たちの足跡:池波正太郎が愛した店で、彼のエッセイにも登場。劇作家・久保田万太郎らも通った。 料理:江戸前手打ち蕎麦が看板メニュー。二八蕎麦のコシと辛口の蕎麦つゆが特徴。 雰囲気:関東大震災後の大正15年に再建された木造建築。店内には太い梁や高い天井が残る。 アクセス:東京都千代田区神田須田町1-13(淡路町駅から徒歩2分)
いせ源(創業1830年)—東京唯一のあんこう鍋専門店
文豪たちの足跡:池波正太郎が愛した店。彼の随筆に「東京で一番のあんこう鍋」として紹介されている。 料理:冬限定の「あんこう鍋」が名物。濃厚な味噌仕立てのスープにコラーゲンたっぷりの鮟鱇が絶品。 雰囲気:昭和5年に建てられた木造3階建て。東京都選定歴史的建造物にも指定されている。 アクセス:東京都千代田区神田須田町1-11-1(淡路町駅から徒歩2分)
新橋 末げん(創業1909年)—三島由紀夫の「最後の晩餐」
文豪たちの足跡:三島由紀夫が亡くなる前夜に訪れた店。彼が愛した「わコース(鶏鍋)」が今も提供される。 料理:軍鶏鍋や親子丼が名物。明治以来の割下を使った鶏料理が人気。 雰囲気:白木の看板が目印。1階はテーブル席、2階は畳敷きの座敷席。 アクセス:東京都港区新橋2-15-7(新橋駅から徒歩3分)
資生堂パーラー 銀座本店(創業1902年)—文豪が愛したモダン洋食
文豪たちの足跡:永井荷風、谷崎潤一郎、池波正太郎らが通った。『吾輩は猫である』にも登場。 料理:オムライス、ビーフシチュー、アイスクリームソーダなど、クラシックな洋食が味わえる。 雰囲気:銀座のモダンなカフェ風空間。赤と白のクラシックな内装が特徴。 アクセス:東京都中央区銀座8-8-3(銀座駅から徒歩5分)
これらの老舗は、単なる食事の場ではなく、時代の流れを感じることができる文化遺産でもある。文豪たちの足跡を辿りながら、東京の伝統的な味を楽しんでみてはいかがだろうか。
