[コラム] SNSにとらわれた旅行、失われた楽しみ

先日、GW連休中に新宿御苑を訪れた。広大な庭園が広がるこの場所には、美しい景観を背景に“インスタ映えスポット”として人気を集めるスターバックスがある。店頭には案の定、長蛇の列ができていた。そこで30分以上も待ち続けて受け取った飲み物を集め集合写真(?)を撮ろうとする観光客の姿が、どこか不思議であり、少し切なくも感じられた。

もちろん、旅のスタイルは人それぞれである。とはいえ、本来の旅の醍醐味は“写真に映る姿”ではなく、その場所ならではの空気や音、景色、そして現地の人々の暮らしなどをじっくりと味わうことにあるのではないだろうか。長い列に並んで完璧な“映え写真”を撮ろうと努力する光景は、旅を楽しむというよりも、SNSに投稿する一枚の写真のために時間を費やしているようにも見える。

さらに問題なのは、こうした“SNS用写真”が個人の満足だけで終わらず、互いを比較する材料になる点である。オンラインに投稿される写真の多くは、その人の“最高の瞬間”のみを切り取ったものだ。それを見た私たちは、無意識のうちに「なぜ自分はあんなふうにできないのか」「なぜ自分だけ誘われなかったのか」と劣等感や疎外感を抱いたり、自分のありふれた日常をつまらなく思ってしまう。ほんの数秒の華やかな場面が、人によっては自分の生活を卑下する要因になり得るのだ。

こうした比較意識が積み重なると、やがては憂うつな気分や不安感を強めてしまう可能性がある。SNSは便利な情報や人とのつながりを得られる反面、“他人の生活と自分を比べ続ける場”になりがちであり、精神的な負担を増やすリスクが大きい。とりわけ、旅という貴重な機会が“見せるための記録”として消費されてしまうのは残念である。

旅先で半日をかけて“映え写真”を撮るより、少しの間でもゆっくりとした時間を過ごしたり、軽く昼寝をしてみたり、あるいは現地の人々の生活を何気なく眺めてみるのもいいかもしれない。カメラに収まらなくても、頭の中と心の中に鮮明に残る瞬間こそ、意外と長く記憶にとどまるものである。

ソーシャルメディア時代に生きる私たちは、改めて“本当の旅の価値”を考え直す必要があるのではないだろうか。「いいね」の数よりも「今この瞬間、自分が何を感じているのか」を重視するならば、旅は私たちの生活をさらに豊かにしてくれるだろう。旅がSNSの“映え”のための手段になってしまうのではなく、自分自身にとって意味があり、大切な経験として心に刻まれることを願いたい。

ソン ウォンソ(Wonsuh Song, Ph.D.)
秀明大学 専任講師 / NKNGO Forum 代表

Reporter

Reporter

コメントを残す

ウィークリーニュースジャパンをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む