近年、東京の街を歩いていると、外国人観光客の数が明らかに増えていることに気づく。観光客のみならず、東京で働いたり学んだりする外国人の数も急増しており、それに伴い外国人を接客するサービス従事者の役割もますます重要になっている。
しかしながら、実際の現場では、時として無礼で不快な対応に直面することがある。その代表的な例が「外国人に対してタメ口で話すスタッフ」の存在である。これは単なる言葉遣いの問題ではない。日本社会、とりわけ接客業においてタメ口は許されない重大な失礼にあたる。それにもかかわらず、外国人であるというだけで、平然とタメ口を使う場面が散見される。
筆者は最近、都内の飲食店でそのような経験をした。同行者とは韓国語で会話していたが、注文はテーブルに備え付けのタブレットで行い、その後スタッフが日本語で丁寧に応対した。しかし、そのスタッフの返答は日本語でのタメ口であった。最初は間違いかと思ったが、その後も一貫してカジュアルな口調で話し続けた。これは言語能力の問題ではなく、外国人に対する認識そのものの問題であると感じた。
「外国人だから理解できないだろう」「日本人と同じように扱う必要はない」といった無意識の差別意識が背景にある。特に、欧米系ではないアジア系外国人に対してこの傾向が顕著であり、東洋人には遠慮なくタメ口を使う一方、白人には丁寧な敬語を保つというダブルスタンダードは、日本社会に根強く残る課題である。
さらに問題なのは、こうした現象が飲食店に限らず、役所や病院、大型店舗など公共性の高い場所でも見られるという点である。これは個人の無礼を超え、制度的に外国人をどう扱うかという根本的な問いへとつながる。
このような場面に直面したとき、どのように対応すべきか。筆者はその場で冷静に「お客様に対してタメ口は控えていただけますか」と伝えた。スタッフはすぐに謝罪し、それ以降そのスタッフが筆者のテーブルを担当することはなかった。重要なのは、即座に毅然とした対応をすることである。
日本語がまったくわからない場合は難しいかもしれないが、ある程度日本語を理解できる外国人であれば、その場ではっきりと「それは失礼です」と伝えるべきである。これは単に個人の気分の問題ではなく、外国人に対する敬意の基準を社会に示す行動である。
また、職場における言葉遣いについても指摘しておきたい。日本では年長者だからといって必ずしも敬語を使われるとは限らない。しかし、外国人であることや契約社員であることを理由に、年下の同僚がタメ口で話すという場面も少なくない。そのような場合には、「韓国ではそのような話し方は信頼を損なう行為とみなされます」と伝えることが重要である。
本稿を通じて伝えたいことは一つである。外国人も敬意をもって扱われるべき存在である。そして、その敬意の第一歩は言葉遣いに表れる。
もし皆さんが外国人で、日本で似たような経験をしたなら、その場で「それは礼儀としてどうなのか」と一言伝えていただきたい。それは自分自身を守る行動であると同時に、次に来る誰かのための小さくても確かな変化の一歩となる。
そして、この体験を通じて、私自身も振り返る機会としたい。
韓国を訪れた外国人や、韓国で働いている外国人に対して、私たちは無意識のうちにタメ口を使っていないだろうか。言葉が通じないからといって敬語を省略したり、「外国人だから大丈夫だろう」といった気持ちで接していないだろうか。
敬意とは国境を越えて求められる基本的なマナーであり、それは私たち自身が実践できる小さな配慮から始まるのである。
ソン ウォンソ(Wonsuh Song, Ph.D.)
秀明大学 専任講師 / NKNGO Forum 代表

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