石破茂首相が自民党総裁を辞任し、退陣を正式に表明した。2024年10月に発足した石破内閣は、わずか1年で幕を閉じることになった。7日夜、首相官邸で開かれた記者会見で石破氏は「参院選などの結果に対する責任は総裁たる私にある」と語り、自らの進退に区切りをつけた。
石破氏は米国との関税交渉を「政権の責任で道筋をつけるべき課題」と位置づけ、トランプ米大統領が日本車関税引き下げを含む大統領令に署名したことを成果として示した。その上で「交渉に一区切りがついた今こそがしかるべきタイミング」と説明した。参院選での大敗後、党内では総裁選の前倒しを求める声が強まっており、首相は「政府機能の停滞を避けるため」衆院解散には踏み切らなかった。
決断の背景には菅義偉副総裁の存在もあった。6日夜、首相公邸で菅氏や小泉進次郎農相と会談したことが決定打になったとみられる。石破氏は「党の分断はあってはならない。菅副総裁が強くおっしゃっていた」と語り、菅氏の進言が退陣判断を後押ししたことを示唆した。
外交・安全保障での首脳外交や農政改革を成果として挙げつつも、地方創生は「道半ば」と悔しさをにじませた。「最も成し遂げたかった事業の一つ」としながら、東京一極集中からの脱却は十分に果たせなかったと語った。また「政治とカネ」問題への不信払拭が果たせなかったことを「最大の心残り」と明かした。
自民党は首相の辞任表明を受け、8日に予定されていた総裁選前倒しの賛否確認を取りやめ、臨時総裁選で後任を選ぶ方針だ。石破氏は「新しい総裁が選ばれるまで責任を果たす」と述べ、自らは不出馬を明言した。
党内外の圧力、参院選大敗、米国との交渉の区切り、そして菅副総裁の進言が重なり、石破内閣はわずか1年で幕を下ろすこととなった。
