東京の不動産価格の上昇が改めて注目されている。なかでも千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区からなる「都心6区」は、経済・文化・政治の中心であり、価格上昇を牽引する地域である。韓国ソウルにも「江南3区」呼ばれるところがあり、東京都心6区と似た地域がある。
ここで比較対象となる「江南3区」とは、ソウルの江南区・瑞草区・松坡区を指す。漢江の南に位置するこれらの区は、韓国における教育・経済の中心地であり、不動産価格は全国で最も高い水準にある。2024年の統計によれば、江南3区の84㎡(約25坪)のマンション平均取引価格は20億ウォン以上(約2億2000万円前後)に達し、韓国全国平均の3倍以上である。特に江南区は進学率の高さでも知られ、有名大学への進学を目指す家庭が集まり、学区をめぐる競争は「教育バブル」とも呼ばれている。江南3区は単なる住宅地ではなく、韓国社会において富と地位を象徴するエリアとして定着しているのである。
最新の調査によれば、東京の都心6区の中古マンション平均希望売却価格は70㎡あたり1億7030万円を突破し、統計開始以来の最高値を記録した。わずか1年で30%以上も上昇し、コロナ前に「高値」と言われた水準を大きく上回っている。新築供給の減少や建築コスト高、人手不足が供給面での背景となり、株高により資産を増やした富裕層や海外投資家が高額物件を次々と購入することで、価格は一層加速している。
特に中国人を中心とした外国人投資家の動きが顕著で、現金購入も目立つ。東京は地方居住者にとっても有力な投資先であり、その需要は絶えない。これが果たしてバブルかどうかは判断しにくいが、価格が上がり続ける現状では都心6区への参入はますます難しくなっている。
再開発が進むなかで資本や人口、インフラが一極集中する傾向はさらに強まっている。ソウルにおける江南3区が「富と教育の象徴」として韓国社会に影響を与えているように、東京の都心6区もまた日本不動産市場の指標としての地位を固めつつある。
この過熱した市場が今後どう動くかは不透明だ。しかし一つ言えるのは、東京の都心6区の不動産が今後も国内外から大きな注目を集め続けるであろうという点である。その動向を見守ることが求められている。
ソン ウォンソ(Wonsuh Song, Ph.D.)
秀明大学 専任講師 / NKNGO Forum 代表
