今年、日本の芥川賞でAI(人工知能)が関与した作品が受賞し、大きな話題となった。芥川賞は、日本の純文学界で最も権威のある賞で、小説家芥川龍之介の業績を称えて1935年に設立された。これまで多くの有名作家がこの賞を受賞してきたが、今年は作家九段理恵が長編小説『東京都同情塔』でその栄誉を手にした。
九段理恵は、受賞直後の記者会見で「ChatGPTのような生成型AIの文章をそのまま使用した」と明かし、注目を集めた。この小説は、犯罪者が同情される未来の東京を舞台に、犯罪者と非犯罪者を区別する新たな社会的概念を扱っている。この挑発的なテーマよりも、AIが関与したという形式により多くの注目が集まっている。
小説内では、社会学者マサキ・セトが犯罪者を「ホモ・ミセラビリス」(ラテン語で「哀れな人間」)と呼び、罪を犯さず生きてきた非犯罪者を「ホモ・フェリクス」(「運のいい人間」)と呼ぶ。犯罪者を収容する塔は「シンパシー・タワー・トーキョー」または「東京都同情塔」と名付けられ、デートレイプの被害者である建築家マキナ・サラがその設計を担当する。しかし彼女はその名に困惑し、作品中では「同情塔が体内に入ってくるのを全身で拒否している…これはまるで強姦される気分だ」と描写されている。
九段理恵は、AIと協力した理由を説明し、「AIは主に取材目的で使用され、作中のキャラクターとAIの会話シーンでAIの文章を使用した」と述べた。しかし、読者からはAIの関与に対して強い反応が寄せられ、受賞後には多くの批判を受けた。彼女は、AIによる名称提案として「ポジティブ・リカバリー・センター」や「セカンド・チャンス・センター」といったものがあったが、そこに感じた違和感が作品執筆のきっかけの一つだと語っている。
AIが小説家になれるかという質問に対して、九段理恵は「読者がAIの作り出した物語を十分に面白いと受け取るならば、AIはすでに小説家と言えるのではないでしょうか」と答えた。しかし、次回作ではAIを使用する予定はないと明言した。
九段理恵は、「小説を書くということは、この世の無限にある謎に対して、まだ誰も書いたことのない物語で問いかけを行い、その答えに少しでも近づくこと」と述べ、今後も新たな問いかけを投げかけていく計画を示唆した。
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