国際エネルギー機関(IEA)加盟32カ国の代表団は、緊迫するイラン情勢を受け、早ければ11日(現地時間)にも、IEA創設以来最大規模となる石油備蓄の放出を決定する方針だ。放出規模は、2022年のウクライナ侵攻時を上回るとの見方が強まっている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は10日、関係者の話として、パリで開催されたIEA緊急理事会で備蓄放出の提案書が提示されたと報じた。加盟国は11日にも全会一致で採択する予定だが、1カ国でも反対すれば放出が遅れる可能性もある。
■ 「石油ショック」から誕生したIEA、再び試練の時
IEAは、サウジアラビアなどのアラブ産油国が1973年に石油供給を制限した「第1次石油ショック」を機に、翌年、経済協力開発機構(OECD)加盟の主要輸入国によって組織された。産油国の攻勢に対し、エネルギー政策の調整や価格安定のための「戦略石油備蓄(SPR)」の管理を担っている。
IEAは2022年初頭、ロシアによるウクライナ侵攻直後にも2回にわたり計1億8200万バレルを市場に供給したが、今回の規模はこれをさらに上回る見通しだ。
■ 「124日分」の備蓄で市場を牽制
IEAのファティ・ビロル事務総長は9日のG7財務相会合で、加盟国が計12億バレル以上の公的備蓄を保有していると明かした。これとは別に、民間企業が規定に基づき約6億バレルを保有している。WSJは、この規模がペルシャ湾近隣の産油国が世界市場に供給する量の「124日分」に相当すると分析している。
今回の措置は、先月28日から始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃と、それに伴うイランの「ホルムズ海峡封鎖」を受けたものだ。世界海上輸送量の約20%が通過する同海峡の封鎖について、サウジアラムコのアミン・ナセルCEOは10日、「供給停滞が続けば世界経済に壊滅的な結果を招く」と警告した。
■ 価格安定への懸念と過去の教訓
原油価格は8日までに1バレル=110ドルを超え、約4年ぶりの高値を記録したが、9日から10日にかけては80ドル台まで急落するなど乱高下している。
WSJは、備蓄放出が必ずしも価格下落を保証するわけではないと指摘する。2022年の放出時は、市場がこれを「深刻な供給不足の予兆」と受け止め、逆に価格が約20%上昇した経緯がある。一方、1991年の湾岸戦争時は、米国の攻撃開始と同時に加盟国が同調して放出し、当日の価格が20%以上下落した成功例もある。
今回の「史上最大規模」のカードが、戦時下の市場心理にどう作用するかが焦点となる。
