かつて日本では「臭みが強い肉」というイメージから敬遠されがちだった羊肉が、近年は若年層を中心に人気を集めている。特に中国東北部や新疆地方発祥の「羊肉串(ヤンロウチュアン)」を提供する専門店が東京都内や大阪、名古屋などの都市部で増加し、新たな外食トレンドとして定着しつつある。
背景には、日本人の食生活の変化がある。高タンパク・低脂肪の食品を好む健康志向の高まりに加え、筋力トレーニングやダイエットへの関心が広がり、羊肉が「ヘルシーな赤身肉」として注目されるようになった。
品質面の向上も追い風となった。オーストラリアやニュージーランド産の新鮮なラム肉の安定供給により、従来敬遠されていた独特の臭みが大幅に抑えられ、日本人でも食べやすい味へと変化した。冷蔵・物流技術の発達も品質改善を支えている。
さらに、中国人留学生や在日中国人の増加によって本場の羊肉串文化が日本各地へ広がったことも大きい。近年は中国東北料理や新疆料理を提供する飲食店が増え、本格的なスパイスを使用した羊肉串が日本人にも受け入れられている。
SNSの影響も無視できない。炭火で焼き上げる様子や、クミンや唐辛子をたっぷり振りかけた羊肉串は写真映えすることから、InstagramやTikTokなどを通じて若年層へ拡散。食べ歩きや居酒屋メニューとして認知度を高めてきた。
価格面でも人気を後押ししている。牛肉価格の上昇が続く中、羊肉は比較的手頃な価格帯を維持しており、コストパフォーマンスの高い焼き物として支持を集めている。
外食チェーンも市場拡大を後押ししている。ラム肉を使った期間限定商品やジンギスカンメニューを展開する企業が増え、羊肉は北海道の郷土料理という枠を超え、全国的な食材へと変化している。近年では「ブーム」から「定番」へ移行しつつあるとの見方も強まっている。)
業界関係者は、健康志向の継続や多文化グルメへの関心の高まりを背景に、羊肉串専門店の出店は今後も都市部を中心に拡大する可能性が高いとみている。
