トランプ前大統領が打ち出した相互関税政策が、世界最貧国のひとつであるアフリカ南部の小国レソトに50%という異例の高関税を課したことが波紋を広げている。影響を受けるレソト政府と繊維輸出企業は「衝撃的」「経済危機」と強い懸念を示している。
内陸国であるレソトは、人口約230万人、2023年の一人当たりGDPは916ドル(約13万円)にとどまり、経済は繊維業と農業に依存している。アメリカは同国の主な輸出先であり、主にジーンズやダイヤモンドが出荷されている。
2日に発表された相互関税で、レソトに対しては日本の24%の2倍を超える50%の関税が課されることになった。トランプ氏は先月の施政方針演説で、対外支援削減に言及する中でレソトを「誰も聞いたことがない国」と発言し物議を醸していた。
レソト繊維会社の幹部テボホ・コベリ氏は、「本当に衝撃的なニュース。アメリカ市場は非常に大きく、ビジネスはそこに大きく依存している」と述べた。
貿易産業ビジネス開発省のマリネオ・セボホリ氏によれば、国内繊維企業のうち約42%がアメリカ向けに輸出しており、昨年の対米輸出額は約2億4000万ドル。輸入額は280万ドルにとどまり、大幅な貿易黒字となっている。
セボホリ氏は、「アメリカからの輸入は非常に少なく、輸出はレソトの経済、特に雇用に大きく貢献している」と話す。国内の多くの物流会社も輸出に依存しており、関税措置によって直接的な失業の危機が懸念されている。
コベリ氏は、「何も対策を講じなければ多くの人が職を失う」と警鐘を鳴らす一方、日本、韓国、ヨーロッパとの新たな取引先開拓に意欲を見せている。
レソト政府は、事態を重く見てワシントンに代表団を派遣し、税率引き下げを含めた交渉を行う方針を明らかにしている。

One thought on “「誰も聞いたことがない国」に50%関税 レソト政府と企業は深刻な危機感”